観光サイクリングin秩父は、日本の通貨と地質を巡ります。30kmちょっと走りますので良い運動にもなりますよ。まず最初に訪れるのは和同開珎の和銅が産出された黒谷地区にある聖神社。708年に我が国初のニギアカガネ(自然銅)がこの地で見つかり朝廷に献上、そして我が国最初の流通通貨「和同開珎」が鋳造されます。聖神社も同時に創建されていますから、1300年の歴史を持つ古い神社。
聖神社から沢筋についた山道を進むと和銅採掘遺跡。
大きなモニュメントが迎えてくれます。
実は和同開珎より前につくられた(683年頃)と推定される富本銭(ふほんせん)があります。無文銀銭、富本銭、和同開珎の関係性は様々な説があるので今後の研究を待つとしまして、今のところ広範囲の流通通貨としては和同開珎が日本最初でいいのではないでしょうか。ちなみに富本銭については日本書紀、和同開珎は続日本紀(しょくにほんぎ)に記述されているようだ。日本書紀は日本最古の歴史書で、神代から持統天皇(~703)までの時代を記述し720年に完成。続日本紀はその次の時代である奈良時代の697年〜791年までの95年間を記述し797年に完成。これらの正史とされる文献から年代を推定することはできるのですが、権力を握っていた側の意見が入り改竄されていたりする可能性も踏まえなくていけません。特にこの時代は壬申の乱(672年/古代日本最大の反乱)がありましたからね。ということから和同開珎646年発行説もあります。今後、真相は解明されるのでしょうか。
階段を少し昇ると和銅採掘露天掘跡を間近に観察することができます。日本の通貨の歴史は、和同開珎・万年通宝・神功開宝・隆平永宝・富寿神宝・承和昌宝・長年大宝・饟益神宝・貞観永宝・寛平大宝・延喜通宝・乾元大宝の皇朝十二銭といわれるものが708年〜963年まで鋳造されます。その後、銅銭の信頼失墜などにより米や絹などの物品貨幣経済に逆戻りします。さらに中国から輸入した宋銭・元銭・明銭が用いられるようになり、日本での公鋳貨幣の発行は600年以上の空白を経て、1606年に鋳造された慶長通宝まで待つことになる。(厳密には、甲斐武田氏の甲州金、豊臣秀吉が鋳造した世界最大の金貨として有名な天正大判、徳川家康の慶長小判もあります)江戸幕府は1670年に渡来銭を禁止し「三貨制度」(金・銀・銭)を確立します。江戸幕府が日本各地に直轄していた天領は鉱脈が多く含まれています。
親鼻橋付近に移動して紅簾石片岩(こうれんせきへんがん)へ。岩石は大きく堆積岩・火成岩・変成岩に分類されます。長瀞は変成岩である様々な結晶片岩でできています。この紅簾石片岩はチャート(放散虫などの殻や骨片が海底に堆積してできた岩石)起源の結晶片岩です。
非常に大きなポットホールも観察することができます。
マンガンを含んでいるからこのような紅になるそうです。
1888(明治21)年に小藤文次郎博士によって世界で初めて結晶片岩中から紅簾石が報告された場所の一つだそう。世界的にもとても貴重な紅簾石片岩でした。
長瀞は日本地質学発祥の地。日本地質学の父と呼ばれる初代東京帝国大学地質学教室教授であるエドムンド・ナウマンが明治11年に秩父巡検したのを皮切りに、多くの研究者が秩父地方を訪れ研究するようになるのでした。
埼玉県立自然博物館へ。地学展示ホールと生物展示ホールに分けられています。入口の正面には新生代の絶滅巨大ザメのカルカロドン メガロドン(約1800万年前から約150万年前)。ホオジロザメ祖先といわれ体長13mに達したと推定される巨大な肉食魚(展示されているのは1000万年前の地層からでたようです)。さらに右に進むと絶滅哺乳類のパレオパラドキシア(約2000万年〜1100万年前)が展示されています。見所はやはり岩石や鉱物。綺麗に陳列されています。
ちょっと気になった展示から。カモシカさんもビックリですね。
博物館の前の荒川河川敷には虎岩など結晶片岩を楽しめます。
昼食は長瀞駅付近で。
昼食後は岩畳散策。写真は秩父赤壁。
少し移動して前原の不整合へ。約1700万年前に古秩父湾があったことが分かる地層があります。不整合とは地層の堆積に大きな隔たりがあり不調和になっていること。海底で堆積、隆起し陸化・侵食、再び沈降し堆積すると不整合になります。この前原の不整合は上から砂岩、その下に礫岩、その下に黒い粘板岩(泥岩)となっています。粘板岩と礫岩の間が不整合で何と1億5000万年の時間の差があるそうです。
秩父駅方面に戻ってきて旧秩父橋(2代目)。1930年に竣工した全長134.6mの鉄筋コンクリートの3連アーチ橋。とても美しい橋です。
水戸屋本店は創業明治8年(1875)の老舗和菓子屋。
看板商品は秩父餅。美味しいですよ!
肉の安田屋は創業大正5年。お土産の定番である味噌漬け(豚・猪・牛)。タイミングが合えばメンチカツやコロッケなど揚げ物をその場でパクつくこともできます。このエリアはレトロな建物がたくさん残っていますので風情も楽しめます。
西武秩父駅近くに近年できました太田甘池堂(おおたかんちどう)の秩父店。本店は小鹿野で享和3年(1803)創業ですから老舗中の老舗ですね。モダンなお店が秩父の中心に出店です。
古代秩父煉羊羹の本煉(いんげん)、田舎(小豆)、柚子(いんげん)の3種類。一番古いのは本煉で、他の2つは戦後に作り始めたのだそうです。全部美味しいのですが、やはり本煉(いんげん)が特にオススメです。手煉りにこだわった昔ながらの製法のため大量生産ができないそうで、強いこだわりが感じられる名店です。
という感じの観光サイクリングin秩父。ツアーではもっと突っ込んだご説明もいたします。お楽しみに〜♪